2011年7月28日木曜日

ケリー鉗子

ケリー鉗子は、血管をつかんだり止血したり組織の剥離・結紮に使われます。
ケリーは大きく分け先端がわん曲していて、わん曲の強い「強彎」と、弱い「弱彎」、直角に曲がっている「直角」に分けられます。
基本的な形は写真のものですが、太さ長さや特殊な湾曲のものがあり、手術部位や幹部までの距離に合わせて使い分けを行います。ちなみに剥離には細いものを使用しますが、弱い組織では、先が鈍のものを使用します。
そのほか、ケリーの使い道は、結紮時に結紮用の糸を幹部まで持っていくのに使用したり、ドレーン挿入時に腹部等にメスできっかけをつくったあとに、突き刺しドレーンを通す際にも使用されます。
手術が始まって一番重要な仕事をしてくれる器械です。ただ、基本的な構造はペアンに似ていますが、硬いモノを掴むと簡単に曲がってしまうので、使用する際には注意が必要なのと、剥離用に使用するため、かみ合わせが悪く先端がずれていると、そのずれが組織に引っかかり思わぬ組織の損傷につながるので、使用前後の点検は重要になります。

良くケリーと同じように見られるモノに長谷川剥離鉗子があります。
このように見た目が同じで、用途も剥離のためケリーとして扱われますが、こちらは剥離専用となります。
ケリーとの違いは、鉗子の溝が縦溝ということで、鉗子を広げて刺した際、溝に組織が引っかからずに使用できることや、血管を噛んだ際にも確実に血流の遮断が可能になります。


手術の専門用語

手術には、よく使われる医療の専門用語の他に、手術の手技に関する専門用語があります。

剥離
基本的に人間の体は膜がいくつも重なって出来ているような感じになっています。そのため、鉗子でかきわけながら膜    を剥がしたり、ガーゼ等で絡めながらはぐことが可能です。
   
    このように、膜を剥いで目的の組織を露出させるのが目的になります。

結紮
結紮は、血管やリンパ管などそのまま切ってしまうと出血等してしまう管状の組織に対し、絹糸(シルク)や吸収糸(溶ける糸)で血管を縛り流れを止めてから切る作業のことです。

遮断
一般的にも使われますが、手術では主に血管を一時的に圧迫して、流れを止める場合に使われます。

吻合
血管同士や胃や腸をつなぎ合わせりことです。吻合するものと場所等により、糸で行なったり自動で縫合できる器械を使用して行われます。

ほんの一部ですがこんな用語が使われています。

2011年7月26日火曜日

ペアンとコッヘル

ほとんどの手術で使用されるのがペアンとコッヘルです。
病棟では良く混同されていることが多いです。
もともとこの2種類の鉗子は止血目的で使われるものです。使用方法は、出血部位を挟んで圧迫止血するのが一般的ですが、ほとんど止血鉗子としての使用はされていないのが現状です。
この2種類の違いは鉗子の先に鈎があるかないかです。
こちらがペアンで
こちらがコッヘルです
実際の使用法としては、ペアンは主に血管を糸で縛り血流を止めて血管を切る手技(結紮)時の糸を医師に渡す際にペアンの先で糸を掴み渡す(ペアン糸)際に使用します。その時には一般的に曲りのものを使用しますが、病院によっては直を使用します。そのほか、比較的柔らかくかつ内臓以外の組織を鋏むことにも使用されます。
コッヘルは、止血監視としての登場もありますが、皮膚の下から筋肉の上の限られた範囲で使われます。そのほか、鈎があるので、滑らず把持力もそこそこ強いので筋膜の把持や、腹膜の把持・骨の把持に使用されることもあります。また、ツッペルという剥離用のガーゼの小さな球を挟むときにも使用されます。そんな使われ方をするので当然曲がってしまうことも多々あります。ペアンであれば曲がってしまえば即引退(破棄)ですが、コッヘルはそう簡単には引退せず、余生として消毒用の鉗子としての道も残されています(病院によってですが)。そして、消毒をはさむことができないくらい把持力がおちてしまったら引退となります。

このように使用法は違う2種類の鉗子ですが、見た目はほとんど同じで見分けがなかなか付けられず、渡したら違いましたなんたこともあります。確実な見分け方法は鉗子の先を凝視するか、開いて鈎の有る無しを確認するのが安全ですが、これ以外でもひと目でどちらがペアンと見分ける方法があります。それが、鉗子のとって近くの溝のあるなしです。
このような溝(刻印)がある場合にはペアンです。

こんな感じで見た目が同じペアンとコッヘルを使い分けています。

2011年7月22日金曜日

医療器具① (セッシ)ピンセット

手術室の業務は手術の介助なので、必ず1日一回は手術用の器械に接します。
そんな中でも全ての科で必ずと言っていいほど使用するのがピンセット(セッシ)です。
ピンセットと一言で言っても形も用途も様々です。

こちらは鈎の付いたセッシ通称鈎ピンです。

主に皮膚や、筋肉の表面にある筋膜という比較的硬い膜状のモノを掴むことが目的となっています。
なので、最初と最後に登場する器械です。





こちらも鈎ピンですが、先が細く細かい部位(手等)に使用されます。
主に整形外科で使用します。




この他に、鈎のないセッシがあります。硬さや、先に繊細さにより内臓の腸に使用するものや、それ以外の細かい部位をつかむののもあります。
また、クランク状に曲がっていて、細い穴(耳や鼻)に入れても直に穴を見ながら使えるものもありす。

このようなセッシを使用すながら手術を進めていきます。


2011年7月20日水曜日

手術の際必ずと言っていいほど登場するのがメスです。
ドラマなんかでも必ず医者が「メス!」なんていうのがお決まりな感じもします。
このメスですが、用途のより様々な形が存在します。主に使われるのは、円刃と尖刃の2種類に分けられます。
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上の刃は円刃で主に皮膚の切開に使われます。皮膚の表面をメスで切る理由は後日にします。刃にそりがあり、接地面が点になるので比較的長い切開に向いているのと、点なので操作性が良く、曲線状に切ることも可能になります。
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こちらは尖刃です。さきが鋭利なのと、直線状の刃が特徴です。用途は、先端が鋭利なので刺すことが可能で、今多く行われている腹腔鏡手術時のポート挿入時の皮膚の切開に使われたり、繊細な切開をしたい場合に使用します。切る昨日的には刃が直線なので、操作性が悪く直線的にしか切れないので、切る幅が短い場合や、腸等の切離にむいています。

今のメスは基本的には替刃方式になっており刃先のみ使い捨てになっています。
no_3.jpg
切れ味はカミソリのように薄いのでとても良いので取り扱いに注意が必要ですが、刃自体が薄いためすぐに切れ味が悪くなります。特に尖刃の先端をほかの器械に当ててしまったりすると切れ味が悪くなり医者に「切れない」と注意を受ける場合があります。(その場合には焦らず安全に交換を)
メスは切れ味が悪くなるのと、血管も容赦なく切ってしまうので、皮膚の表面までの切開でそれ以降は電気メスなどを使用していきます。筋肉の直上まで切ることがありますが、その時にはかなり急いでいる手術になります。

メスは刃物なので、事故が比較的起きやすい器械です。取り扱いには焦らず十分に安全を確保して取り扱ってください。 

2011年7月18日月曜日

トリアージ

トリアージは多くのけが人などが出た際に、誰から優先的に病院に送るか又は治療を行うかを振り分けることです。
振り分けると言っても、限られた医療を有効に使用するためで、見捨てることではありません。
あまり使用する機会はないですが、今回の震災のような場合は使用する事態になりました。
その時に使用するのがこのカードです。
images (1)トリアージ.jpg
4色に分かれているところは切り取ることができ、見た目でその人が重症なのかがわかります。また、手書き出来るようになっているので、細かい症状がわかります。なので、またその中からさらに優先度を決めていきます。なのでトリアージは繰り返し行うので、途中の判断ミスを少なくしています。
ただ、黒に関しては以前は死亡と判断された場合につけていました。今では搬送不要と用語が変わっていますが、死亡と判断されている状況にはかわりはありません。
このタグを付ける作業は時間との戦いにもなります。少ない時間で確実に判断し、多くの人を見ることが必要になりよほどの訓練が必要だと思います。

早く病院で治療して欲しいのはみんな一緒だし、みんな助けたいと思うのも医療者だと思います。そんな中このようなタグを付けることに対しては被災者・トリアージ担当者ともにストレスになると思います。
日常では考えられないことが起きるのが災害だと思います。日頃の準備も大切ですが、当事者になったときにどれだけ冷静に物事を考えられるかも重要だと思いました。




2011年7月15日金曜日

手術室看護師の役割

手術室看護師の役割は大きく分けて3つに分けられます。

①直接介助:
医師の介助を行う看護師。機械出しとも言いい、ドラマなんかではメスを渡したりしている人です。この役割の看護師は手術の流れと解剖を理解して先を読んだ介助が求められます。スムーズな介助で手術の時間が変わってくる重要な役割となります。

②記録:
その名のとおりその患者に行った看護を記録する役割になります。麻酔科のサポート・患者管理を行うこともあるため、各麻酔の知識と身体変化を把握する必要があります。

③外回り:
患者管理・麻酔のサポート・直接介助のサポートなど広い範囲を把握して動く役割になります。その為手術の流れの理解、進行状況、使用器械を把握する必要があります。

ドラマなんかでは、直接介助が目立っていますが通常の手術ではチームで協力して1人の患者に複数人で看護を提供しています。